通りを逸れて間も無く、オフィスビルの並ぶ向こうに異質な建物が見えた。

その理由は言うまでも無く外装材だが、80年もの間其処に在るという事に依る所の方が大きい。
まるでこれからお見合いだとでも言わんばかりに、私は思わず深呼吸してからその足元へと向かった。
此の光景を見て、百人中百人が指摘するであろうそれが、一種異様な雰囲気を醸し出している。

中央電気倶楽部、葛野壮一郎設計、1930年竣工である。
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